黒鯛釣り、難しそうだけど、やってみたい!
そんな皆様に、今回は遠矢釣法で黒鯛釣り始めたい方へのおおまかな手順を伝授いたしましょう。
準備編
各種、道具については別コーナーにて解説しておりますので、そちらをご参考になさってください。
ウキ釣りは道具が多くて…と言われますが、こうした道具(竿、リール、バッカンなど)一度揃えてしまえば、消耗品以外は買い足さなくても十分足りる場合が多いです。
低予算であっても、お金をかけたいところは、竿とリールでしょう。
<例えば予算3万円以内だと、初歩的な竿とリールとタモ、水汲みバケツ、柄杓がギリギリかな>
竿、1万円〜1万5千円程度の全長5〜5.3mで腰のしっかりしたものを選んんでください。(専門用語で言えば「7:3調子」。)
リール、1万円前後で2500番台レバーブレーキ付きのものがお勧め。
必須道具は、バッカン、水汲みバケツで、ブランド品でなければ3000円以内でも揃います。
また、小物類(ハリス、道糸、ウキ止め糸、針、サルカン、ガン玉)とウキ(遠矢ウキ)は必要です。
大事なことですが、タモ(網)もお忘れなく。「他人のタモは借りない」ことが常識です。なぜならタモは竿よりも高額なことが多いからです。気軽に貸して折ってしまったときは….ご想像ください。くれぐれも他人のタモだけは借りないようにご注意ください。タモは5000円程度からあります。
<例えば予算5万円以内だと、中クラスの竿とリールと中級クラスのタモ、有名メーカーのバッカン&水汲みなどある程度揃う>
<例えば予算8万円以内だと、中級クラスの竿とリールと中級クラスのタモ、クーラーボックス、有名メーカーのバッカン&水汲み、などある程度のものは揃う>
ご予算に応じて、まずは揃えてみましょう。
釣り場に行く前の準備1
まず、どこの釣り場に行くのかを考えましょう。1週間前から天気予報を見ます。大事なことは、釣れた場所にこだわるのではなく、当日の風向きと風の強さです。
1週間前になるとおおまかな風予報が出ますので、それを参考にしてください。そして、当日の風が釣りをしているときに背中側から当たるような場所を選びます。これを「背風になる場所」と言います。
釣果情報が出ている海域(釣り場のポイントではなく、同じ海域)を選び、背風になる場所を探します。そして、これは当然のことですが、釣り禁止などの場所は絶対に入らないようにしてください。
最近はグーグルなどであらかじめ航空写真を見ることができますから、便利です。下記もご参考になさってください。
釣り場に行く前の準備2
釣行前日に釣り道具を準備します。当日に現場で仕掛けを作ることもできますが、あらかじめ道糸はリールに巻いておき、竿にセットしておいたほうが良いでしょう。朝の貴重な「マヅメタイム」を逃さないためです。
(日の出、日の入り前後の魚が活発になる時間帯をマヅメと言い、朝マヅメ、夕マヅメと表現します。)
道糸を巻いたリールを竿にセットしたら、そのままでもいいのですが、時間短縮のために、竿のガイドに道糸を通しておきます。先端から遠矢スベイルとゴム管(ウキストッパー)を道糸に通し、先端はサルカン10号を遠矢結びで結束しておきます。そして、竿キャップから少し道糸を20cmほど出して、そのままそっとキャップをしておきます。こうすることで、当日は、ウキ止め糸を締めることとガン玉を打つこと、そしてハリスとハリを取り付けるだけの簡単なものにすることができます。
冷凍オキアミも前日から解凍します。当日に急速解凍させるとぐしゃぐしゃになってしまうため、前日からクーラーボックスなどを利用し、ゆっくりと時間をかけて解凍することをお勧めします。(クーラーに入れて蓋をあけておく、外に置いておくなど。釣具屋さんで予約をすれば解凍してくれるところもあります。)
配合餌が揃っているかどうかも点検しましょう。配合餌は下記をご参照ください。
現場についてから
釣り場についたら、まず先客がいるかどうかを確認します。先客がいれば、挨拶をして、「おはようございます。横に入っても大丈夫ですか?」と、尋ねる程度のマナーが欲しいですね。(これ重要です。一人しかいなくても、実は家族連れだったり、グループだったりします。そして、場所が意外となかったりしますので、お声がけをして確認するのが良いでしょう。)先客がいない場合は、入りたい場所に道具を置いて始めましょう。もちろん、釣り禁止の場所には入らないようにしましょう。
道具を配置
釣り座に道具を配置します。右利きの方は、右にバッカンと水汲みバケツ、左に付餌やくわせだんごバケツなどですが、道具の配置は重要で、手際よく釣りをするための準備です。釣り上げるたびに、後ろの道具箱からゴソゴソとひっかきまわして餌を取り出すのは効率が悪いものです。最小限の動きで、仕掛けを振り込めるように道具の配置は重要です。
下記をご参考に配置などを考えてみましょう。
コマセの準備
道具の配置が終わったら、いよいよコマセ(撒き餌)を配合します。前日に作る方もおられると思いますが、遠矢釣法では現場でのコマセづくりを推奨します。なぜなら1日経つと配合餌の状態が変わってしまうこともあるからです。
さてコマセが作り終わったら、軟式野球のソフトボール程度のコマセを丸めた団子を3個、自分がポイントと定めた場所へ投げ込んでおきます。これが遠矢釣法の「ポイント釣法」と呼ばれる由来のもとになったのですが、団子を投げた場所をその日の黒鯛釣りのポイントと定めるということです。詳しくは、下記の動画をご覧ください。
仕掛けの準備
コマセ団子を3個、海に投げこんでからゆっくりと仕掛けを作り始めます。
現場についてすぐに仕掛けを作る人は、一見で素人だなとわかります。手慣れた人はまずコマセを打ち始め、それから仕掛けを作り始めるものです。特に遠矢釣法では、コマセが効いてくるまでに少し時間がかかりますので(平均2時間〜最大4時間)、準備はコマセを投げてから始めます。下記をご参考になさってください。
実釣開始
仕掛けの投げ方は2種類
仕掛けを振り込むのは、大きく2通りあります。1つめはオーバースローで、竿の弾力を生かして頭の上から投げる方法です。これは大遠投するときに適した方法です。
2つめは、タスキぶり。針先を持ち、横にスライドさせるようにして投げます。これは、背後に壁があってオーバースローできない場合や、風が強いとき、また手前に投げる際に有効です。
水深を測る
さてまず最初に、ポイントとなる場所の水深を測ります。これが遠矢釣法(ポイント釣法)の要(かなめ)になります。
仕掛けの針先にゴム管付きオモリのゴム管部分を刺して、それをポイントに投げ込みます。ウキが完全に沈んでしまうようであれば、タナ(ウキ下)は浅いので、ウキ止め糸をリール側へずらします。逆に、ウキがいつまでたっても変化がなく、かつボディが水面に突き出ている状態であれば、タナ(ウキ下)が深すぎますので、ウキ止め糸を針先側へ移動させます。
どの程度動かすかは、手前の道糸が動く様子を観察しましょう。道糸の糸ふけがまったく動かない状態であれば、タナが深すぎます。また、糸ふけが足りなくて道糸がつっぱった状態になるようであれば、タナが浅すぎます。いずれも、ウキ止め糸の位置を調整します。その道糸のフケ具合で、どの程度ウキ止め糸を動かせばよいかを考えましょう。
餌をつけて釣り開始
水深が測れたら、底トントン(水深と同じ長さのウキ下)のタナからスタートします。魚のアタリ具合や、その日の状況でさらにタナを微調整することもあります。
それでは早速、餌をつけて投げてみましょう。まずは、オキアミ1尾づけからスタートすることが多いです。オキアミの頭を取ったり、頭をつけたり、針へ刺す方法を工夫したりしましょう。
魚のアタリがあれば、すかさずアワセを入れます。
タナとは
タナとは、その日の魚の遊泳層を狙ったウキ下の長さを指します。つまり、仕掛けで言えば、ウキ止め糸から針先までの長さです。その長さは水面から海底までの長さが基本となり、その日の魚のいる遊泳層を探っていくわけです。
このタナを細かく設定することが遠矢釣法の基本であり、黒鯛釣りをするのに重要なポイントとなります。黒鯛は底を狙え、というセオリーがありますが、遠矢釣法ではその底の概念が細かく設定されています。底を何センチひきずっているのか、底ちょうどなのか、底から5センチ浮かせているのか、こういった細かな設定で黒鯛の爆釣が実現するのです。
皆さんがおなじみのアジ釣りですら、厳密に言えばタナ設定が重要であり、遠矢釣法ではタナを設定することで、常識はずれの「昼間に大アジを爆釣する」ことも可能です。
下記の釣行記では、日中に細かなタナ設定で40cm級の大アジを地波止で釣っています。ご参考になさってください。
道糸の状態を確認
仕掛けを振り込んだ後は、仕掛けが馴染むまで数分かかります。その間に道糸を適切な長さ出して調整します。
馴染んでウキが落ち着いたら、竿先に出した道糸は「ノ」の字を描く様に、ゆったりと出しておきます。もちろん、潮の流れにしたがって、順次道糸を送り出していきますが、常に「いつアワセても良い」ように、準備をしておきます。出しすぎると、うまくアワセることができませんし、出さなすぎると道糸をひっぱってしまい、魚に警戒心を与えてしまいます。
コマセ(撒き餌)を撒く
仕掛けが馴染んだら、コマセを撒きます。基本は、仕掛けがながれていく方向へ先回りをするような形でコマセを撒くことです。柄杓で2杯が遠矢流の撒き方です。多すぎるとかえってダメです。的確に撒くのが大事です。さぁ、コマセを撒いたら、あとは魚のアタリを待つのみです。
魚の反応がないとき
魚の反応がないときの多くは、急激な水温変化があったときと、タナがあっていないときです。初心者であれば、タナがあっていないことが多いでしょう。水深を測ったときに、すぐに潮位を目で測っておきます。たとえば、護岸の貝や梯子など、潮の緩慢でタナも微調整していきますから、最初に測ったときから10cm上がったとか、30cm下がったとかの目安をつくっておくと良いでしょう。一番やってはいけない行為は、朝一番に水深を測ったきり、1日中まったくウキ止め糸を動かさないことです。潮は上下しますから、そのたびにタナ(ウキ止め糸の位置)を上下して、その日のタナにあわせましょう。
アワセとは
アワセとは、魚の口に針がしっかりかかるように強く竿をしゃくり上げて、仕掛けを引っ張る行為を言います。アワセる際にゆっくり仕掛けをひっぱって本当に魚がかかっているかどうか「魚に聞く」という行為はしません。聞いている間に、魚が餌を離すこともあるからです。聞かなくとも遠矢ウキはしっかり魚信を伝えますので、ウキが沈んだら、間髪入れずにすかさず針をかけるように竿をしゃくりあげてください。
遠矢釣法をマスターしている方のアワセは、竿が空気を切って「ピシッ」と音が出るのが特徴です。円錐うきの方は大アワセするとウキがぶっ飛んで来ると言って、大アワセはしない傾向があります。
魚の取り込み
魚を掛けたら
魚を掛けたら、アワセをしっかり入れておくことと、それから竿先を必ず見て、竿先に道糸がからんでいないか、また竿先から出ている道糸の方向をみて、魚がどちらへ走っているか、魚の大きさなどを確認します。
初心者のうちは、魚が掛かったら、あわててリールを巻き取ろうとする方が多いですが、竿を垂直にしたままで魚の出方を見るほうがよいです。もし、隣の人が魚を掛けたら、かならず自分の仕掛けは海中から出しておきましょう。これはマナーです。隣の人が魚をかけているのに仕掛けをそのままにしていると、魚が走り回って自分の仕掛けまで巻き込まれてしまうのを防ぐ目的と、隣の人がスムーズに魚を取り込める様にするためです。この行動は、釣り人の間では常識とされているのですが、意外と知らない方が多いので、ぜひ知っておいてください。
タモ入れまで
魚が泳いでいく方向に走っていき、走る方向へ竿先を倒します。道糸は決してゆるめない状態で倒すのです。これは少し訓練が必要ですね。
ついつい、魚が進んでいくと反対方向へ竿をひっぱりがちですが、そうすると魚をコントロールできません。かならず、進行方向へ竿を倒すことをマスターしてください。
タモ入れ時の注意
他人の魚を気を遣ってタモ入れお手伝いすることがあると思いますが、気心が知れた相手のお手伝い以外はやめたほうがよいです。というのも、タモ入れ時に失敗することも多いためです。正解は、釣っている人にその人のタモを手渡すだけ、がトラブルがなくて良いでしょう。もちろん、信頼している仲間同士ではタモ入れを助け合うことはよく行っている行為です。
魚は頭からタモに入れましょう。尻尾からは入りません。
タモを陸に上げるとき
魚をいれたあと、タモの柄を長く伸ばしたまま、持ち上げるのは厳禁です。折れてしまいます。タモは入れ子構造になっていますので、1節ごと垂直に収納しながら魚を持ち上げていきましょう。その際、魚が重たいからといって、柄を防波堤に擦り付けてゴリゴリとあげることは厳禁です。これ、初心者にタモを貸したくない理由のひとつです。傷をつけられたくないのです。慣れていない人にタモを貸すと、こういう荒い使い方をされてポキンと折られてしまうこともあります。
1節ごと垂直に収納しながら、そして防波堤に擦り付けずに魚をあげてください。これは練習が必要です。
魚の保管
生かすか〆るか
魚を釣って食べる場合は、すぐに〆て氷水に入れておくのが最も鮮度が良い状態が保たれます。(氷水とは、海水をクーラーに入れて魚を入れ、そこにたっぷりの氷を上から充す方法です。
スカリ(魚を入れる網)にいれた状態の魚は、ストレスのために身が白くなります。味も落ちるため、鮮度を重視するのなら氷水での〆をお勧めします。
遠矢流・魚の締め方
巷では、魚の尾っぽ付け根をナイフで刺すとか、頭の後ろを刺すとかいろいろ情報が流れていますが、遠矢流の魚の締め方は簡単できっちりと締めることができます。
それは、魚のエラを一本外すだけです。外すと大量の血が出ます。数分放置すると出し切りますから、そのあとクーラーの氷水にいれて〆ましょう。もちろん大量の血は海水できれいに流すことをお忘れなく。
ご参考になれば幸いです。ぜひ、ウキフカセ釣りを日本中に広めた遠矢釣法で、黒鯛釣りを楽しんでください。