棒ウキあるある「朝と夕方で浮力が変わる」は本当か?
作り手が、いちばん驚いた
2018年ごろから、棒ウキが急速に見直されるようになりました。遠矢うきを手に各種トーナメントを勝ち上がる方が増えたことがきっかけです。以来、作っても作っても追いつかず、ご注文から5年待ちの状態が続いています。本当にありがたいことだと思っております。
ところで最近、棒ウキを使い始めたお客様から、こんなことを言われました。
棒ウキは、朝と夕方で浮力が変わるからね。
私たちは、驚きました。
聞けば、これは釣り人の間では「棒ウキあるある」として、なかば常識になっているのだそうです。朝と夕方で浮力が変わる。1、2回使ったら塗装が剥げてダメになる。だから棒ウキは消耗品だ――多くの方が、そういうものだと諦めて使っている。
正直に申し上げます。遠矢うきでは、朝と晩で浮力が変わることは、あり得ません。朝3Bだったウキは、夕方まで使っても3Bのままです。なんなら翌日も、同じガン玉を残したまま続けて使っても、浮力は変わっていません。
私たちが当たり前だと思っていたことは、世間では当たり前ではなかった――今回は、この「棒ウキあるある」の正体を確かめてみたいと思います。
お客様の声に、証拠が残っていた
実は、このサイトに掲載してきた皆様の釣果報告の中に、証言がすでに残っています。
姫路の井上正紀様は、今年に入ってから、30年ほど前に使っていた遠矢ウキを出してきて、再び使い始めたそうです。その結果は――年なしを含む型もの12枚の大爆釣。
30年前のウキが、調整なしでそのまま現役で使える。長きにわたって大切に保管してくださっていたことも含め、本当に嬉しい報告でした。
太田源様は、他社の棒ウキを詳細に研究されたうえで、こう書いてくださいました。
①はメーカーの量産型で成りは似てますが全然飛びません🤣 ②使っている内に浮力が変わります😭
そして大分県の大野様の初釣行レポートには、こうあります。
使い終わったときの吃水線が、使用開始と全く変わらず、棒ウキあるあるの、ボディーのステン環などの隙間から一切吸水していないことに感動しました。
――お気づきでしょうか。「棒ウキあるある」という言葉は、私たちが作ったものではありません。お客様ご自身の言葉です。それほどまでに、「棒ウキは浮力が変わるもの」という諦めは、釣り人の共通体験になっているのです。
あるあるの正体は、「吸水」
大野様の言葉に、答えがそのまま書かれています。
ボディーの金具の隙間や、傷んだ塗装から、水が染み込む。
ウキの素材は、多くの場合、木です(プラスチック製のものもあります)。木は水を吸えば重くなり、浮力は下がります。朝は3Bだったウキが、夕方には水を吸って沈み気味になる。喫水線がじわじわ上がってくる。「朝と夕方で浮力が変わる」の正体は、これです。
つまり、このあるあるは嘘ではありません。棒ウキ界では、実際に起きていることです――遠矢うき以外で。
ただし――それは棒ウキの宿命ではありません。作り方の問題です。
なぜ、遠矢うきは変わらないのか
名人に聞くと、こんな話が返ってきました。
とある磯で、ウスバハギ(通称・新幹線)にウキを齧られたけど、塗装が剥げた状態でも釣りを続行できたよ。しっかりと防水処置しているから、塗装が剥げたぐらいでは浮力は変わらないよ。笑
さらっと言っていますが、大事なことを言っています。防水は、塗装の前に終わっているのです。
遠矢うきの防水は、塗装の前の工程で、素材そのものに染み込ませてあります。だから表面の塗装が魚に齧られて剥げ、水が素材に触れても、素材が水を吸いません。浮力は変わらない。
塗装というのは、外から違いの見えない工程です。塗ってあれば、どれも同じに見える。だからこそ、差の出る工程です。遠矢うきは、気の遠くなるような回数、何重にも塗り重ねます。30年前のウキが現役で使えるのは、この見えない部分の仕事の積み重ねです。
そして、出荷直前には必ず浮力チェックを行います。一本一本、実際に浮かべて、喫水位置を確認してから送り出す。遠矢うきの喫水線は、ミリ単位の精度を保っています。
これは、今に始まったことではありません。1983年の雑誌広告に、すでにこう書いてあります。
一本一本遠矢国利が心を込めて造っているもので、浮力やバランスのチェックをしており――
43年前から、同じことをやっています。
(この広告は 棒ウキを作っている”本当のメーカー”はどこか? でご覧いただけます。)
【実験】「浮力0」を並べて浮かべてみた
言葉より、見ていただくのが早いと思います。
市販されている「浮力0」表記の他社製棒ウキを、水槽に浮かべてみました。(メーカーが特定されないよう、写真は白黒に加工しています。)

同じ「0」の表記で、喫水線がバラバラです。高く浮いているもの、トップの根元まで沈みかけているもの。これは使い込んだ結果ではなく、現在市販されているものを浮かべた結果です。
同じ検証を、遠矢うきでやってみます。

ゼロ点(喫水線)が、ぴたりと揃います。
「喫水線」とは、水がここまで来ます、という線のことです。船にも、荷物を積んだらここまで沈みますという印が入っています。ウキの場合は、規定の浮力表示どおりのオモリを仕掛けに付けたとき、水面がどこに来るか――この水面の位置を、遠矢うきではゼロ点(喫水線・喫水位置)と呼んでいます。
そして、このゼロ点の位置をパッケージに明記して販売しているメーカーを、少なくとも私たちは、他に知りません。(ゼロ点について詳しくは 遠矢うき最大の特徴<ゼロ点(喫水線・喫水位置)のこと> をご覧ください。)
浮力表記とは、本来「このオモリを付ければ、ここまで沈む」という約束です。その約束が最初から揃っていなければ、朝と夕方の変化を語る以前の問題です。そして、最初に揃っていて、一日使っても動かない――それが、一本ずつ浮かべて検査してから出荷する、ということの意味です。
【ミニ知識】「喫水」と「吃水」
大野様のレポートの「吃水」という表記に気づいた方もいるかもしれません。実は、どちらも正しい表記です。「吃水」は船の世界で古くから使われてきた書き方ですが、「吃」が常用漢字にないため、現在の法令や新聞では「喫水」(喫茶・喫煙の「喫」)に統一されています。本記事では地の文を「喫水」とし、お客様のお言葉は原文のまま「吃水」としています。
「あるある」は本当。ただし――
整理します。
- 「朝と夕方で浮力が変わる」は、本当に起きています――遠矢うき以外で。お客様の証言のとおりです
- 正体は、金具の隙間や傷んだ塗装からの吸水です
- ただしそれは棒ウキの宿命ではなく、作り方の問題です
- 遠矢うきは、塗装の下の防水処置と、何重もの塗り重ねと、一本ずつの浮力検査で、それを起こしません。43年前からです
- だから、30年前のウキが今も現役で釣果を上げています
確かめ方は簡単です。大野様がやってみせてくれました。釣りを始める前と終わったあとで、喫水線を見比べてください。そこが動いていなければ、そのウキは水を吸っていません。
「棒ウキあるある」――残念ながら、遠矢うきでは通用しないのです。笑
※本記事は、お客様からお寄せいただいた釣果報告と、遠矢国利名人への聞き取りをもとに構成しています。特定のメーカー・製品を批判する意図はありません。

