遠矢国利
まず〈中〉をそろえること
下記の表に示したように、遠矢ウキには現在、178もの種類がある。これだけ数が多くなると、初心者ならずともどれを使ったらいいのか迷ってしまう。製作者としてはそれぞれ必要があって考案したわけだから、できれば全種類をそろえてほしいのだが、すべてそろえるとなるとかなりの金額になる。そこで、まずそれぞれのタイプの中をそろえることをおすすめしたい。とりあえず、0号ー中、1号ー中、180sー中、230sー中、300sー中、この5種類をそろえておけば、どんな釣り場でも太刀打ちできるはずだ。その理由を説明するまえに、まず遠矢ウキがどのようにして誕生したかをお話ししよう。
遠矢ウキ誕生秘話
最初はヘラウキから
東京オリンピックの開催された昭和39年、私たちの家族は東京の下町に移り住んだ。私が見よう見まねでヘラプナ釣りをはじめたのも、ちょうどその頃である。ハゼやサヨリなども釣るようになったが、使い慣れたヘラウキを使ってみたところ、ほかの人より多くの釣果を得ることができ、私はウキ釣りの面白さにますます夢中になった。ハゼやサヨリなども釣るようになったが、使い慣れたヘラウキを使ってみたところ、ほかの人より多くの釣果を得ることができ、私はウキ釣りの面白さにますます夢中になった。
相模湖の近くへ引っ越したあとも釣り場を茅ヶ崎から南房総へ移し、私はヘラウキでサヨリを釣りまくった。そんなある日、コマセに群れる大きな魚(じつはボラ)を目撃、なんとか釣ってやろうとしたが、地元の釣り人にヘラウキじゃ無理だなと笑われてしまった。玉ウキにしたがどうにもアタリが出ない。またヘラウキを使ったところ、ウキがスッと沈むのである。この経験が、私のなかに、ヘラウキの形状に対する信頼感を植えつけたようだ。
遠矢うきの誕生
しかし、海ではヘラウキはあまりにももろすぎ、風のある日は飛ばせないということもわかった。ボラ釣りに夢中になって海岸に寝泊まりしていた時、焚き火で燃え残った木を削って細長いウキのようなものをこしらえた。これが遠矢ウキの原型だったのである。つまり、遠矢ウキはどこかの釣り名人が作ったものではなく、まったくのド素人が考え出したウキというわけだ。それからはひたすらウキを作る日々がつづき、昭和50年(1975年)、海釣り用のヘラウキをなんとか完成させることができた。遠矢ウキの最初の名前はメジナヘラウキ、ウキをテストするのにメジナばかり釣っていたところからのネーミングである。(*メジナ=グレのこと)
もちろん、最初からたくさんの種類があったわけではなく、最初は遠矢ウキはたった1本しかなかった。これがいまの2号ー中(現在代替品は180s-中)である。その頃の私は神奈川県、静岡県、千葉県などの釣り場を駆けずりまわっていた。堤防もあれば、湖のような内湾もあり、荒磯もあったが、2号ー中(現在代替品は180s-中*)1本だけですべての釣り場をカバーしていたのである。たった1本のウキを、パターンのちがうさまざまな釣り場で使いこなしているうち、自然といろいろなテクニックが身についた。私の釣りは自分が作ったウキに教わったと言ってもいいだろう。
ウキを販売するようになって、視カの弱いお客さんから「もうちょっと太くて長いのを作ってくれよ」と言われて作ったのがB-中(現在代替品は230s-中*)だった。なるほど、たしかにウネリのある時やポイントが遠い時は見やすい。もっと感度がよくて安いのをということで誕生したのが1号ー中、もっとオモリを背負う深場用をという依頼で作ったのがLBー中(現在代替品は300s-中*)である。つまり、遠矢ウキはすべて中が基準になっているのだ。小と大はそのバリエーションにすぎない。したがって、はじめにそろえる時はそれぞれの中を購入していただくと、ほとんどのフィールドをカバーすることができるというわけだ。
(1990年の「クロダイ釣り・遠矢釣法の全て」より抜粋し、一部加筆しました。)
(*4/14・2号、B、LBの代替品の表記が間違っておりました。お詫び申し上げます。正しくは、2号-中→180s-中、B-中→230s-中、LBー中→300s-中です。)